Sipka(シプカ)は「すべてのものには物語がある」をコンセプトに
身につける人が物語を感じるような アクセサリーをセレクトしたショップです。
作家が作品に込めた想いは ギャラリーのような店内で丁寧に紐解かれ、
手に取った人が自由な発想で装う事で 「物語」となり循環してゆきます。
作り手が託した幾つもの物語とともに、不思議なアクセサリーとの出会いがあなたを待っています。

 植田明志「歩くのをやめた夜」と「夜が好きな子ども」。

植田明志「歩くのをやめた夜」と「夜が好きな子ども」


 


 


僕らが生まれる前、宇宙が生まれる前、


風は吹いていたのだろうか。


 


僕らが死んだ後、誰もいなくなった地球にも


音楽はあるのだろうか。


 


 


10月より開催してきた植田明志個展「虹の跡」もラストスパートとなりました。


Sipkaブログでは引き続き、作品と、その物語を紹介していっております。


今回は個展会期途中で追加納品された新作


「歩くのをやめた夜」と「夜が好きな子ども」を紹介致します。


 


 


 


植田明志「歩くのをやめた夜」


植田明志「歩くのをやめた夜」


 


植田明志作品の特徴である老人の顔に


夜の闇を想わせる獣のような身体が造形された「歩くのをやめた夜」。


死を迎え、その身体は朽ちてしまっても、


その後には、"かつて自分が確かにそこに存在した証” である


キラキラした跡が残るという想いを表現した作品です。


 


 


植田明志のオブジェ「歩くのをやめた夜」 


 


長い時を生き、やがて来る死期を迎えるばかりとなった夜の存在。


黒い毛に覆われたその身体は、深い夜を纏ったかのようです。


やがて、死を迎えたその身体からは夜が抜け落ちていき、骨だけとなり


そこには、キラキラとした跡だけが残ります。


 


 


 


植田明志「夜が好きな子ども」 


植田明志「夜が好きな子ども」


 


長い年月の間に多くの仲間を失い、やがて迎えた死の時。


骨が露出し、朽ちゆく身体は動かなくなり、


ひとり孤独に死を待つのみとなった"夜”の前に現れた不思議な子供。


 


 


植田明志「夜が好きな子ども」 


 


ひとり、死を待つ "夜" が寂しくないように


子どもは最後の時まで、優しくそばに寄り添っています。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


植田明志「歩くのをやめた夜」 


 


「歩くのをやめた夜」


 


もう、私の身体は朽ち始めていた。


ゆっくりと腰を下ろす。もう、歩く意味もなかった。


 


 


私はずっとこの夜の中を生きてきた。


真っ暗だったが、それなりに楽しいこともあった。


仲のいいやつもいた。私より先に死んでしまったけど。


もう、私のことを知っているやつは居ないだろう。


それほど、長く生きた。


 


  


月はぽっかりと夜空に穴をあけたように浮いている。


あの穴を覗けば、私はずっと昔のことまで思い出せる気がした。


でも、あの穴は私には眩しすぎる。


 


 


 


植田明志「夜が好きな子ども」


 


 


気づけば、私の目の前に子どもが居た。


私はもう声さえ出なくなっていたし、


手足はすでに固まり初めていた。


子どもは何も言わずに、私のひげの中を出たり入ったりしていると思えば、


しとしとと背中に這い上がり、むき出し始めた私の骨をみているようだった。


 


 


 


私はひとりで死にたい。


はやくどこかへ行ってくれないか。


そう言いたかったが、声は出ない。


しばらくして子どもは自分の角をぴかぴか光らせながら、


自分のおでこと私の鼻をぴったりとくっつけた。


 


 


 


植田明志「夜が好きな子ども」 


 


 


それは柔らかくて、きっと太陽に照らされた雲は


こんなふうに暖かいのだろうと思った。


瞼の裏側が、夏の夕日みたいに滲んだ。


眩しかった。その光はだんだん収束して、


あの月のように丸くなった。


 


 


 


植田明志「歩くのをやめた夜」 


 


 


もう目も開かなくなっていた。


あの子供の顔も見えない。


あの子供の頭を撫でてあげたかったが、手足も動かない。


まだそこにいるのか?


また鼻にやわらかい雲が押し当てられた。


 


 


 


 


植田明志「歩くのをやめた夜」 


 


もう、涙が私の瞼一面に広がるのがわかった。


それは夜雨にできる水たまりのように美しかった。


ずっとそばに居てほしいと思った。


ああ、どこへも行かないでくれ。


 


 


 


あの子がそばにいるのを感じる。


涙がついに流れた。


暖かい光はぼやぼやとしながら、


急激に成長する単細胞生物みたいに私を包み込んだ。


 


 


 


 


植田明志「歩くのをやめた夜」と「夜が好きな子ども」


 


 


夜が、その光とひとつになったその後には、


月に照らされてきらきらと輝く骨が、


いつまでも残っていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


植田明志個展「虹の跡」


 


 


植田明志 個展「虹の跡」


2016年10月3日(月)〜11月16日(日)


愛知県名古屋市中区大須二丁目14番地3号エビスビル2F


※地下鉄鶴舞線 大須観音駅 1.2番出口より徒歩5分  


 


 


 


 


 

 植田明志「虹を呼ぶ弓」。

植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓:


 


 


僕らが生まれる前、宇宙が生まれる前、


風は吹いていたのだろうか。


 


僕らが死んだ後、誰もいなくなった地球にも


音楽はあるのだろうか。


 


 


10月より開催してきた植田明志個展「虹の跡」もラストスパートとなりました。


Sipkaブログでは作品と、その物語を紹介していっております。


今回は個展展示スペースでも一際目を引く大型作品


「虹を呼ぶ弓」を紹介致します。


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」の写真


植田明志「虹を呼ぶ弓」 


 


 


古来より、"神が矢を放つ弓" であると考えられてきた


「虹」をインスピレーションソースに


二頭のクジラが融合したような巨大な弓と


その射手を表現したオブジェ「虹を呼ぶ弓」。


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」 


 


三日月状の弓の表面には古代の遺跡を想わせるような


緻密な模様が彫られています。


三日月の中心には、小さな子供の顔が造形されており 


何かに祈りを捧げるかのように静かに目を閉じています。 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」 


 


個展「虹の跡」作品の特徴でもある人体の一部を取り入れたデザイン。


腹部には骨状の部位も造形され、大きく開いた身体の内部には


白いクジラが浮遊しています。 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」 


 


『虹を呼ぶ弓』


 


思えば、もうしばらく、虹を見ていなかった。


雨が降れば、外には出なくなったし、


コンクリートに染み込んだ、夕立の匂いも嗅がなくなった。


だから、遠くで嵐の音がしたときに、僕の胸は弾んだ。


 


 


あの弓が引かれる。


僕の心の中にある大きな弓。


きりきり、と苦しそうに音を立てて、長細い胴体がしなる。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」


 


 


嵐がくる。


その弓は世界の果ての町を突き刺し、


凄まじい轟音とともに、摩擦熱でその街を焼いた。


衝撃波の中で、逃げ惑う人々は、あっというまに消えてなくなる。


灰になった真っ白な街で、僕がひとりだけ立っていた。


最後に手を繋いでいた女の子も、いつの間にか居なかった。


 


 


 


僕の手の中にある、微かな灰がざらついた。


次第に雨が落ち来てくる。


雨雲なんてなかったが、太陽に照らされ金色になったこの世界で、雨は降った


それはまるで、何かを諦めた子供が、思いきり口を開けて、笑っているような雨だった


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」 


 


 


ああ、このままこの街は、大きな夜に呑まれてしまうだろう。


この真っ白な街を月の光が反射させて、いつか行ったスキー場みたいになる。


僕は、そのまま骨を蹴散らして、そこを歩く。


そしたら、きっとだんだん泣きたくなってくる。


その時にはじめて声を出して泣こう。


 


 


 


僕はひとり、膝を抱えて夜が暮れるのをまった。


雨は少しづつ暖かくなり、僕の肩を叩く。


陽が沈むまでの一瞬、分厚い雲の一番下から、光が射す。


それは白い大きな生き物が千年に一度産む、特別な卵のようだった。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」 


 


 


その卵の光は、この暖かい雨に語りかける。


雨粒は光を帯び、僕の顔を照らした。


僕は虹ができているのに気付いた。


ずっとここに居たんだよ。って言っているようだった。


この雨が、虹を見せてくれたのだ。


 


 


 


虹はずっとここにいて、雨がその輪郭を叩き、その光を虹に写しこんだのだ。


涙は堪えたかった。だって、この夜のためにとっておきたかったから。


気が付くと声が出てしまっていた。


どんどん大きくなった。


口が裂けるんじゃないだろうかと思った。


 


 


 


植田明志のオブジェ「虹を呼ぶ弓」


 


 


僕は、虹が消えてなくなってからも、


小さな光が降り続けるこの世界で、


たったひとりで泣き続けた。


 


 


 


 


 


 


 


植田明志個展「虹の跡」


 


植田明志 個展「虹の跡」


2016年10月3日(月)〜11月16日(日)


愛知県名古屋市中区大須二丁目14番地3号エビスビル2F


※地下鉄鶴舞線 大須観音駅 1.2番出口より徒歩5分  


 


 


 

 植田明志「星を繋ぐ王さま」と「王冠を作る子どもたち」。

植田明志のオブジェ「星を繋ぐ王さま」


 


 


僕らが生まれる前、宇宙が生まれる前、


風は吹いていたのだろうか。


 


僕らが死んだ後、誰もいなくなった地球にも


音楽はあるのだろうか。


 


 


植田明志個展「虹の跡」好評開催中です。


Sipkaブログでは作品と、その物語を紹介していっております。


今回は大型作品「星を繋ぐ王さま」と


共通の作品世界を持つ小作品「王冠を作る子ども」を紹介致します。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「星を繋ぐ王さま」


 


植田明志「星を繋ぐ王さま」


 


 


インドゾウの頭骨からインスピレーションを得て造形された


大型作品「星を繋ぐ王さま」。


長い2本の牙と、エキゾチックな身体の模様が特徴的です。


 


 


  


植田明志のオブジェ「星を繋ぐ王さま」


 


 


ふたつの手が繋ぎ合わさったような「星を繋ぐ王さま」の身体。


惹かれ合う二人は、ふたつでひとつの存在。


王さまの下半身を構成する手は、寂しくて膝を抱えたような姿をしており


もう一方の上半身から伸びた手が、優しく包み込んでいます。


 


 


 


植田明志「王冠を作る子ども」


 


巨大な「星を繋ぐ王さま」の背中にある砂場で


砂の王冠を作る「王冠を作る子ども」たち。


不思議な子どもたちを植田明志ならではの


温かみのある造形で表現しています。


 


 


 


植田明志「王冠を作る子ども(兄)」 


植田明志「王冠を作る子ども(兄)」


 


夜の砂場で砂の王冠を作る不思議な兄弟は、


それぞれ夜空を想わせる深い青の衣服に身を包んでいます。


兄は2本の角、弟は1本角に垂れた耳と


異なるデザインの頭巾を被っています。


 


 


 


 


 


植田明志「王冠を作る子ども(弟)」 


植田明志「王冠を作る子ども(弟)」


 


ふっくらした赤いほっぺに静かに目を閉じた表情。


小作品ながらも、植田明志作品の特徴である


優しげな子供の造形が見事です。


 


 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「星を繋ぐ王さま」 


 


 


『星を繋ぐ王様』


 


こんなに深い夜の中、砂場で子どもたちが二人で遊んでいた。


その砂場はきらきらと金色に輝いているように見えた。


月明かりのせいかと思ったが、夜空に月は浮かんでいなかった


二人は何かひそひそと話しながら、砂を細く、月のない夜空に伸ばしていった。


 


 


 


 


植田明志「王冠を作る子ども(兄)」 


 


 


彼らのとなりには、古ぼけたプラスチックのシャベルと、


誰かの名前がかかれたバケツが置いてあった。


その名前は、すり減って読めなかった。


 


 


数本の砂の塔ができた。


砂を固めた水のせいか、より金色がちらちらと輝いていた。


それはまるで王冠のようにみえた。


 


 


 


 植田明志「王冠を作る子ども(弟)」


 


 


 


どこか遠い宇宙で、ひとつの星が、仲間外れにされた星を呼んだ。


仲間外れにされた星は、誰にも見つけてもらえていない、


ハッブル宇宙望遠鏡にすらも写っていなかった。


太陽ができるずっと前から、この世の隅っこにいた星。


膝を抱えた腕は、深い闇の中で白く震えていた。


 


 


 


 


植田明志「王冠を作る子ども(弟)」 


 


 


名前を呼ばれたとき、もっと震えた。


大木が風に吹かれたような、綺麗な震えだった。


そっと暗闇に腕を伸ばす。指先が触れた。


思わず引っ込めた。もう一度、伸ばす。 


もうひとつの手が、震えていた星の手を、


探るように、確かめるように、握った。


 


 


 


 


植田明志「星を繋ぐ王さま」 


 


懐かしい感触だった。


懐かしさなんてあるはずない。


なのに、いつか会ったことがあるように思えた。


 


暖かい。いつかの夏の終わりの、温度。


確かな鼓動があった。このリズムも、知っている。


ふたつは少しだけ笑った。


涙が流れた。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「王冠を作る子ども」 


 


 


曖昧な記憶達は涙とまじり合い、光り合った。


それは確かな光になり、ひとつの大きな星になった。


いつしか、あの砂場のふたりはいなくなっていた。


後には、何かを祝福するように、金色に光り続ける王冠があるだけだった


いつまでも、光っていそうな、微笑み合っていそうな、輝きだった。


 


 


 


 


 


 


 


植田明志個展「虹の跡」 


 


植田明志 個展「虹の跡」


2016年10月3日(月)〜11月16日(日)


愛知県名古屋市中区大須二丁目14番地3号エビスビル2F


※地下鉄鶴舞線 大須観音駅 1.2番出口より徒歩5分