植田明志「トラベラー」と「フレンドシップ」
植田明志個展「遠すぎるパレード」もあと2日。
約2ヶ月に渡った白い星のパレードも間もなく終わりを告げます。
今回のブログでは共通の物語を持つ2体の作品
時空の旅人「トラベラー」と「フレンドシップ」を紹介致します。
土偶のような宇宙服を着た男の子「トラベラー」。
透明ドームの中で、夢見るように目を閉じたその顔の周りには、
青い記憶の結晶が浮かび上がっています。
男の子の夢の中から抜け出して、過去へ未来へと時空を旅するトラベラー。
旅の途中、同じく時空の旅人である「フレンドシップ」と出会い
白い星のパレードの中核であり記憶の結晶体である「ファンタジアの車」に引き寄せられ
フレンドシップと共に、ファンタジアの車の周りを飛び回っています。
旅の途中、男の子と出会う「フレンドシップ」。
「トラベラー」と同じ時空の旅人であり、同様の宇宙服を着ていますが
その顔は怪獣の子供のようなデザインとなっており
翼も宇宙服からそのまま繋がったような質感になっています。
「トラベラー」、「フレンドシップ」の土偶のような宇宙服は
共に緑青がかった色あいで塗られており、古代の遺跡のような佇まいも相まって
「ファンタジアの車」と共通のデザインラインを持つものとなっています。
「トラベラー」
たまに夢が、夢であるとわかる夜があります。
今日はそれでした。
僕は宇宙をひゅんひゅんと飛び回っていました。
星たちがいつもよりずっと近くに感じられ、
銀河たちがくるくる回っているのが見えます。
遠くで、死んだ星が、泣きながら色んなものを食べていました。
すると遠くから、やはり同じ様にひゅんひゅん言わせて、こちらに飛んでくる人がいました。
彼は僕の隣にぴたっと来ると、そのメロンソーダの中の泡みたいな眼をぷくぷくと光らせました。
僕は、彼とそのまま旅をしました。
僕は彼から色んな話を聞きました。
月みたいな大きな魚が、遠くで寂しそうに泳いでいたこと。
怪獣になるのが夢の子供の話。
大きな花の根元で、大切な誓いをしたこどもの話。
彼はそんな話を沢山話してくれました。
そして、彼のいちばんお気に入りの場所へ連れて行ってくれるそうです。
とても遠いらしいので、にやにやしながらぼそぼそと耳打ちをしてくれた彼の言うとおりにしてみます。
僕らは少しだけズルをして、一瞬で4つの宇宙を超えました。
最初に目に入ってきたのは、きらきらした青い宝石達。
彼はといえば、僕のすこし上で得意げにしていました。
青い宝石達は、今までの寂しい出来事をガラス玉に閉じ込めて、
そのまま海の中に沈めたら出来そうな、そんな気がしました。
彼が、僕にひとつだけ、とっておきの宝石を教えてくれました。
覗いてみなよ、なんて。
万華鏡を覗くように眼を近づけてみると、
小さな子どもが眠っているようでした。
触ったりしたならば、宝石ごと色々な気持ちが、ほろほろと崩れていきそうです。
宝石の中の子どもは、もう宇宙で最初の真っ赤な夕焼けみたいな星ができた時から
そうしてきたようにして、眠っていました。
そして僕は、ふと感じました。
ぞくっとして、涙がぽろぽろと溢れると、
そこから青い宝石がどんどん溢れ出して、僕を覆います。
上を見ると、彼もぷくぷくと涙を流して一緒に泣いてくれました。
僕と彼の宇宙服は、もう宝石でいっぱい。
そして僕らはそのまま、ゆっくり眼を閉じました。
気がつくと、もう朝でした。
外はどんよりと曇っていて、今にも雲が泣いてしまいそう。
僕は、はっと昨日の夜から右手に握り締めたままのそれを思い出しました。
今日は学校で、昨日拾った珍しい
メロンソーダみたいな色をしたビー玉を、友達に自慢するのです。
|