eerie-eery「人形になりたかった少女」と「自傷の若者」
好評開催中の eerie-eery 個展「追憶と眠りの国 ~眠りの為の回顧展~ 」。
死の国 "アムニジア” にひっそりと佇む歯科医院を舞台に
アムニジアに生まれた双子の歯科医の姉妹と
様々な理由でこの世を去り、死の国を訪れる死者たちを人形で表現。
個性的な死者の人形たちと、付随する物語をお楽しみ頂けます。
展示フライヤー中面に記された物語の序文に当たるテキストには
歯科医の姉妹のもとを訪れる死者たちの様子が描写されており
これは全ての死者たちに共通する文章となっています。
またそれとリンクするかたちで、各作品にも個別の短い物語が用意され
死者たちの生前の姿や、それぞれの死に至る原因などが表現されています。
「追憶と眠りの国 ~ 序文~ 」
産道のような暗い洞窟をくぐり抜けると
そこには金色の野原が広がっていた。
わたしはアムニジアにたどり着いたのだ。
一面に広がる金色の草原は
どこまでもどこまでも続いていて終わりがないようだった。
草を分け入って暫く歩いていると
草原の中にぽつりと佇む家を発見した。
歯医者である。
アムニジアには街も店も民家もない。
あるのはこの歯医者のみである。
歯医者の扉を開けると
車椅子に乗った少女が真っ直ぐこちらを向いて座っていた。
少女の後ろにはもう一人、顔のよく似た少女がいて、
よくみると背中でくっついているようだった。
車椅子の少女がポケットから小さな鏡を取り出し
わたしの口の中を覗く。
同時に背中にいる少女が書類をばらばらとめくり始めた。
車椅子の向きをくるりと変え、
背中にいた少女がわたしの前に現れた。
少女はわたしに赤い便箋を差し出した。
その途端に何とも言えぬ衝撃が
わたしの胸を打つのがわかった。
わたしは忘れていた何かを思い出した。
そこには愛おしい顔があった。
頬を温かい夕日が撫でていった。
自らを傷つけてしまうのがやめられず、
傷だらけで苦悩する若者の人形。
全身を覆うように包帯が巻かれた姿が造形されています。
『自傷の若者』
わたしが白痴ならそんなことしなかったのに
美しく生きたい
眠り方を知りたい
呼吸に合わせて胸を正しく上下させたい
深く縫い進める深海のゆらめきに抱かれながら貴方の琴音に辿り着きたい
eerieが活動初期から作り続けている顔の無い人形たち。
その最新作でもある「人形になりたかった少女」。
球体関節人形のような脚部に、首元にはアクセサリーを飾り
背中には大きなネジが付けられています。
『人形になりたかった少女』
陶器のような透き通る白い肌が欲しい
森の静寂を映す深い湖のような硝子の瞳が欲しい
しなやかな長い手足が欲しい
天を向いた長い睫毛と深く折り畳まれた瞼が欲しい
つんと高い鼻と小さく色付いた唇が欲しい
わたしが貴方の一番の時でこの世界が止まればいい
宝物にして
どうか閉じ込めていて
|