Sipka(シプカ)は「すべてのものには物語がある」をコンセプトに
身につける人が物語を感じるような アクセサリーをセレクトしたショップです。
作家が作品に込めた想いは ギャラリーのような店内で丁寧に紐解かれ、
手に取った人が自由な発想で装う事で 「物語」となり循環してゆきます。
作り手が託した幾つもの物語とともに、不思議なアクセサリーとの出会いがあなたを待っています。

 植田明志「飴玉金魚」と「夢の生まれる場所」。

植田明志「夢の生まれる場所」


 


 


10月より、約2ヶ月間に渡って行ってきた


植田明志個展「虹の跡」作品紹介も最後となりました。 


今回は「虹の跡」の物語のフィナーレを飾る物語


「夢の生まれる場所」と「飴玉金魚」を紹介致します。


 


 


 


植田明志のオブジェ「飴玉金魚」 


植田明志「飴玉金魚」


 


植田明志の最初期の作品である「流星銀魚」以来の


金魚をモチーフとした作品「飴玉金魚」。


また、個展最後の作品となる「夢の生まれる場所」とも


連なる物語世界を持つ小作品です。


 


 


 


植田明志のオブジェ「飴玉金魚」 


 


丸く膨らんだ身体の中に沢山の夢が詰まった金魚。


膨れあがっていった夢や記憶たちは、


やがて金魚の尾ビレに縛られた紐が解け、


身体の中から流星のように飛び出します。 


 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」 


植田明志「夢の生まれる場所」


 


流れ星をイメージソースにした、


「虹の跡」の物語の最後を飾る作品 「夢の生まれる場所」。


 大きな流れ星と、それを見上げる二人のキャラクターが造形された


ディオラマタイプの作品です。 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」


 


 


流れ星の首元からはキラキラした光が放射線状に溢れ出し、


その身体は絵画的な表現で彩色されています。


詩的な情景は、見るものに様々な物語を感じさせる


植田明志ならではの作品となっています。


 


 


 


 


 


 


植田明志「夢の生まれる場所」


 


 


『夢の始まる場所』


 


旅の途中だった。


パレードはいよいよ佳境。


小さな演奏者達は少し飽きてきたようだ。


ちょっと抜けてあっちに行ってみようぜ。


僕らは少しだけズルをして、パレードから外れた。


 


 


ごつごつとした山道を進んでいく。


段々パレードの音楽が遠ざかっていく。


運動会で、ひとり体調を崩したとき、保健室で休む僕の耳に聞こえる歓声。


それを思い起こさせた。


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」 


 


 


少し切り立った丘の上が見えた。


あそこまでいってみようよ。


そこから見た景色の中は、上は満点の星空。


ちかちかと瞬く星たちは僕たちを少し叱っているようだった。


 


 


遠くでパレードが見えた。


彼らはまるで僕らのことを忘れてしまったかのように思えて、


少し不安になった。


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」 


 


 


その瞬間、大きな流れ星が流れた。


それは本当に大きくて、緑色に光ったかと思えば、


桃色の尾を引いて、ぱらぱらと小気味の良い音を鳴らした。


 


 


 


こんなに大きな流れ星を見たのは、初めてだった。


その流星は僕らの頭上すぐですれ違い、


花火大会のように、地面と、僕らの頬を光で染めた。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」 


 


 


ああ、なんて大きな夢。


きっと誰かが眠ったんだ。


その人の、報われなかった夢は、


こうして大きな流星となって僕らを照らしてくれる。


 


 


 


報われなかった夢は、そのまま役目を終える。


でも、最後にこんなに素晴らしい景色を見せてくれている。


星が死ぬときと同じだ。


 


 


 


そして、この宇宙のどこかで、また夢が生まれるんだよ。


さあ。帰ろう。


みんなに教えてあげよう。


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢の生まれる場所」


 


 


とびきり大きな夢を見たよ。


誰かが眠ったんだよ。


僕は、このことを、忘れられないよ。


僕たちは、かすかな音楽を頼りに、駆けだした。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 植田明志「夢をみる公園」

植田明志のオブジェ「夢をみる公園」


 


 


10月より開催してきた植田明志個展「虹の跡」は


11月16日を以て好評のうちに幕を閉じました。


Sipkaブログでは引き続き、作品とその物語を紹介していきます。


今回は「夢を見る公園」を紹介致します。


 


 


植田明志のオブジェ「夢をみる公園 


植田明志「夢をみる公園」


 


誰もいなくなった公園にひっそりと佇む遊具たち。


暗闇の中に浮かぶ、そのシルエットに太古の恐竜の姿を見た


植田明志の幼少期への憧憬を表現した作品です。


 


 


 


植田明志「夢をみる公園」 


 


首長竜の骨格を想わせる滑り台。


体表は化石を想わせる古美がかった質感となっています。


台上には小さな子供たちが造形され 


夜の闇の中で、ひそひそと秘密の話をしているかのような


情景が、郷愁を感じさせます。


 


 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢をみる公園」 


 


 


『夢をみる公園』


 


公園で約束をしていた。


あたりは真っ暗。


夏の終わりを告げる歌を虫たちが歌っている。


月はまんまる。


途中大きな怪獣みたいな雲が通りかかり、月を目にして遊んでいた。 


 


 


公園の門をくぐる。


その時に短い合言葉が必要だった。


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢をみる公園」 


 


 


公園に入ると、すでに遊具たちは夢をみている最中だった。


かちこちと、氷のような音を鳴らしながら、


本来の自分たちの姿を取り戻していた。


 


 


 


やあ。と上から声がした。


「久しぶり。」僕はそう返す。


「あのときから随分時間が経ったね。」


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢をみる公園」 


 


 


沢山の話をした。


 


いつかの夕方が綺麗だったこと。


そのときにススキまみれになったね。


噛まれたこともあった!あれは君が悪い。


茂みを抜けると、君の身体にはたくさんのひっつきむしが付いていて、


僕が取ってあげたんだぜ。


あのとき、君は声を出して泣いていた。


ずっと見てたんだよ。


 


 


 


気づくと、すでに星たちは消えて、


月は溶けていく氷のようにその姿を滲ませていった


遠くでコバルトブルーに沁みていく空は、


今日という日そのものを強制的に知らしめさせた。


 


 


 


植田明志のオブジェ「夢をみる公園」 


 


 


さよならだね。


僕は必死で涙を堪えた


また夜がきたら、会えるよ。


 


 


 


その声は、月と同じように空に滲み、風に吹かれて消えて行った。


それ以降、すっかり夜の公園に行かなくなった。


何故だか自分にもわからなかった。


いつからかぽっかりと忘れていたみたいに。


 


 


 


植田明志「夢をみる公園」 


 


ふと思い出したのは、


寒くなりススキがふわふわと空を撫でだしてからだった。


今日、天気がよかったら、行ってみよう。


 


 


少し大きくなった僕を、彼はびっくりするだろうか。


 


 


 


 


 


 


 

 植田明志「よその怪獣」

植田明志のオブジェ「よその怪獣」


 


 


10月より開催してきた植田明志個展「虹の跡」は


11月16日を以て好評のうちに幕を閉じました。


Sipkaブログでは引き続き、作品とその物語を紹介していきます。


今回は「よその怪獣」を紹介致します。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」


 


植田明志「よその怪獣」


 


深い夜の闇を想わせる長く黒い毛に覆われた身体と対照的に


金色に光る角を持った姿が目を惹く「よその怪獣」。


子供のような顔の目の部分が人の手のようなもので


覆われているのも印象的です。


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」 


 


キラキラと金色に輝く怪獣の角。 


その輝きは自分自身の可能性の光なのかもしれません。


しかし彼の両の目は手で塞がれており


自身の輝きを見ようとしていないようにも思えます。


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」 


 


「よその怪獣」の背面。


大きな尻尾には植田明志作品の特徴である老人の顔が。


今展示「虹の跡」において、老人の顔は


過去の象徴として表現され、作品たちの後ろ側に造形されています。 


よその怪獣も、その大きく思い尻尾を引きずるようにしており


自身が過去に縛りつけられている様を表しています。


 


 


 


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」


 


『よその怪獣』


 


夜に溶けるようにして、怪獣がいた。


頭の大きな角は、パズルのように砕けた月のピースがそのまま頭に付いたみたいだ。


その角は、今まで見てきた何よりも綺麗に、輝いていた。


 


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」


 


 


よく目を凝らしてみると、ずるずると尻尾を重そうに引っ張っていた。


身体に見合わないその大きな尻尾は、


彼を過去に縛り付けているようだった。


 


 


記憶の中で、彼は生きていた。


実際に彼は、その先を見ようとしていなかった。


目は自分の意思で塞いでいるように思えたし、


塞いだ手はあまりにも長いこと動いていないようで、石のように固くなっていた。


彼は、自分の綺麗に光る角を、見ないようにしているようにも見えた。


 


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」 


  


それでもきっと彼は、いつか彼の意思で目を開くだろう。


そして、そのときには、自分の綺麗な角をしばらく見て、


人知れず月の優しさを知るだろう。


僕はそう祈った。


 


 


しばらくして、山の上からこの深い夜を一望できる機会があった。


それはまるで大海原のように、


木々が夜風に吹かれて嘶き、遠くではオオカミの遠吠え。


星がよりいっそう近くに感じ、


星たちもまた僕のことを近くに感じているようだった。


 


 


 


 


植田明志のオブジェ「よその怪獣」


 


 


この広大な夜の中のどこかに、


彼はひとり、ひっそりと歩いているのだろう。


彼は、今も記憶の中で生きているのだろうか。